ウィズコロナと犬鳴村恐怖回避ばーじょんと
橋が赤くなったり都庁が赤くなったり、
百合子がマスクをしないで会見したり。
世の中がまた少しずつ変容し始めている。
右も左もコロナコロナという中、
戻ってきた嬉しい娯楽が映画館の復活。
映画館は徐々に復活している。
ソーシャルディスタンスをとりながら。
レイトショー無し、席は一つずつ空ける、といったスタイルになる為、おそらく将来的には映画の料金が見直される事になるんじゃないか、と思う。
だって今までの席数の半分の身入りになるわけだから。
映画館の維持費に対して消費者が担う費用は単純に倍になってもおかしくはない。
動画のサブスクサービスがコンテンツとして市民権を得た数年前、動画コンテンツは二極化されるという説があった。
つまり、無料で家庭で楽しめる娯楽か、金を払って見に行く娯楽か。
映画館は岐路に立たされている。
向こう10年くらい先と思われた映画館のプレミアム化は、コロナのお陰でもっと近い将来に起きる。
大衆娯楽というポジションは、劇場で見る映画ではなく、手元のスマホやタブレットで見られるカジュアルでファストフード的な動画に取って代わる事は想像に難くない。
そんなコンテンツメディアのパラダイムシフトが目の前で起きている。
我々はそんな一大産業の過渡期でビジネスをしている。
それは幸か不幸か、あるいは…
そんな中でですよ。
「犬鳴村恐怖回避ばーじょん」(原文ママ)を見てきました。
元々昨年末に公開されてた、ジャパニーズホラーの
系譜を持つ清水崇監督肝いりのホラー映画なんですね。
このオリジナル版に追加編集された今回の「恐怖回避ばーじょん。
でその編集っていうのが、
・怖いシーンの直前に「幽霊登場まであと何秒」っていうテロップを急に表示
・犬鳴村に到着した際に「ついにあの犬鳴村を発見!」と川口浩探検隊的なテロップを表示
・祟られて病変した人物と、それを取り押さえる人の攻防シーンで格ゲーみたいな体力ゲージを表示
・奥菜恵が登場するシーンでは「この人呪怨出てたよね」というメタネタを表示
・オバケが出てくる時はオナラの音がする
・被害者がオバケにぶっ殺されるシーンでは
イラストの犬が画面いっぱいに出沢山出てきて「ワンワン」言いながら走り回る
・グロいシーンではイラストやの絵で表現される
・オバケをSNOWっぽいフィルターでデコる
・オバケから逃げる時に天国と地獄を流す
みたいな、とにかく怖くなくなるにはどうしたら良いかを徹底的に考えた編集がされています。
僕がこの編集版に価値があると思うのは、これまでに無かったマネタイズの部分なんですね。
どういう経緯でそもそもこのバージョンが公開されたかはよく知りませんが、
一作品を作って別バージョンとして収益化することで一粒で2度美味しい収益構造がイケてる。
「恐怖回避バージョン」とすることで、従来ホラーを見なかった層にもアプローチしつつ、既にオリジナル版を見た消費者をもう一度呼び戻すことができるんですよね。
コロナで今、新作が上映できないという状況下でこれだけの収益モデルを考えた鮮やかなやり口に嫉妬すら覚えます。
追加尺無しで、オリジナル版を上から編集しているだけ。
多分ですけど、編集ファイル無しで、書き出したmp4でも下手すりゃ作れるんじゃねえの?っていう感じなんですよね。
つまりリモートワークででも作れるんじゃね?っていうものになってました。
その割にはちゃんと「恐怖回避」できてるという、マーケティング領域と編集領域、そしてウィズ・コロナワークを高次元で成立している(多分だけどね)、すげぇ今後のケーススタディとして取り上げられそうな手腕でした。
こんなやり方って映画史で後にも先にもやれないんじゃない?っていうくらい発想の勝利ですね。
やったもん勝ちの。
っていう追加編集部分はとてもとてもビジネス的な観点でただただ打ちのめされましたが、本編はうんこでした。
昭和東映特撮ヒーローが夏になるとやる、怪奇シリーズのお化けの回みたいな出来。
キカイダー01でやる系のやつ。
そういえば配給会社は東映でした。
俺君さ、これ映画館復活の一発目で見る映画だったの?