平成大特撮1989-2019を読んでライダー冬の時代のある日を思い出した話。
少し前に平成大特撮1989-2019という本を買った。
専門性の強いライターの方々が、マグマの様な熱量の愛で平成を駆け巡った作品たちを惜しみなく語った本だ。
特撮と言えばヒーロー系を真っ先に思い浮かべるが、この本ではホラー系や戦争映画なんかも取り上げている。リングとか。亡国のイージスとか。
そういえばいつの頃からか「特撮」が勝手に「ヒーローモノ」のニュアンスを内包しているような感じあったが、そもそも特撮って特殊撮影の略だものな。そらホラー映画やら戦争映画も特撮に入るわな、なんてことを思わされる。
自分は昭和62年生まれのキモメン中年。
物心着いた頃には仮面ライダーもウルトラマンもテレビではやっておらず、その姿はビデオのみで見ることができる昔のヒーローだった。
一方メタルヒーローとスーパー戦隊は毎週新作が放映され、おもちゃを買い与えられながら応援していた事を記憶している。
この本を読んでライダー不在だった冬の時代、ヒーローに渇望していた少年時代をふと思い出した。
今の様に動画ストリーミング配信なんてない時代、不幸にも父親の気まぐれで昭和特撮ヒーローの片鱗に触れてしまい、その偶像を追いかけ、まるで隠れキリシタンの様に生きていたあの時代。
物心がついた平成2年からクウガの影が現れる平成12年の10年ほどの間だけ振り返ってみようと思う。
これはとある小学生の記憶オンリーの思い出な為、一部実態とは乖離しているかもしれないが、あくまでいち子供から見えたあの頃の特撮周辺の雰囲気記録だ。
- ライダーもウルトラもいなかった平成2年
- ドラマの重力をキャラメルコーンのCMで中和していた平成3年
- 平成4年
- ライダー、円谷、戦隊に死角の無かった平成5年
- 戦隊離れした平成6年
- 永遠の誓い一人勝ちな平成7年〜9年
- 時代をゼロから始める準備をしていた平成10年
- 荒野を渡る風飄々と平成11年
- 20世紀最後の平成12年
ライダーもウルトラもいなかった平成2年
地上波ではライダーもウルトラマンもいない。
テレビマガジンやてれびくん、テレビランドを教科書に過去のヒーローに想いを馳せていた。
母の話では父親がライダー、ウルトラ1期の直撃世代だった為、我が子にアンパンマンをすっ飛ばしていきなり特撮ヒーローを与えたらしい。情操教育の概念イカレてんのか。
ライダーの原体験はブラックの最終回とRXの一話を再編集し、唐突に1号からゼクロスまでのダイジェストが始まるビデオだった。
※後に東映ヒーロークラブというレーベルと判明した
また、レンタルビデオ屋の型落ちソフトで仮面ライダー10巻が我が家にあったのでゲバコンドルとヤモゲラス、ドクガンダー回をアホみたいに見ていた。
ウルトラの原体験は当時BSでやっていたというウルトラマンレオの再放送を録画してくれた父親録画のビデオ。
タイショーの回だった。ウルトラマンというのは優しいんだなぁなんて思った次の回では2対1で弟とアトランタ星人をボコっていた。
また、ゾフィーという偉そうなウルトラマンが丁寧に自分に話しかけてきてこれまでのウルトラマンの活躍を見せてくれるビデオにもどハマりしていた。古館伊知郎の実況でAとゾフィーが戦うシーンがあって、エースはこういう作風なんだ、と勝手に勘違いしていた。ウルトラマンZOFFYというタイトルは後に知った。
自分の大好きなレオがあまりフォーカス当てられていないのが少し寂しかったが、Aを助けに来るゾフィー、テンペラー星人をボコる6兄弟、80を助けに来るユリアンといった戦士たちに心を奪われたのを覚えている。
ウルトラビッグファイトもこの冬の時代を支えてくれた貴重なライブラリ。
パッケージだけで飯が何杯も食えるね!
古今東西の東映ヒーローを集めたビデオも文化財として残しておきたいレベルで記憶している。権利的に難しいんだろうけど是非ブルーレイでソフト化してほしい…
最高にシビれるジャケットだ。。。
ドラマの重力をキャラメルコーンのCMで中和していた平成3年
今思うとなんて重い消費カロリーだ。
毎週かかさず見ていた記憶があるが、いつも心の何処かにライダーを探す自分がいたので、後楽園ゆうえんちのcmでRXが出てくるとテンションが上がっていた。
また、「前作の主人公の帰還」という今でも大好物のシチュエーションはナイトファイヤーによって植えつけられた様に思う。
平成4年
ブライ死す!
ライダー、円谷、戦隊に死角の無かった平成5年
今でも大好きなダイレンジャーは本当によく真似をしたのでリュウレンジャーの名乗りは今でも再現できる。衝撃の最終回含め、自分の中で忘れられないスーパー戦隊だ。
この年、エポックメイキングな出来事が2つあった。
お兄ちゃん!ことZOの銀幕デビューによる、仮面ライダーの復活。※真は本当に怖すぎて序盤でリタイアしていた。
そして退屈から俺を救いに来たエージェント、電光超人グリッドマンによる、円谷系特撮の帰還である。
ZOは1号から数えて20周年。今で考えるとジオウからクウガまでの20年。
そう考えると昭和ライダーがあっという間と捉えるか、平成ライダーが長いと考えるか。
物差しが変わっただけで何とも不思議な気分だ。
ZOは映画館で見たものの、ドラス製怪人が怖すぎて直視できなかった様に記憶している。
それだけに化け物どもをやっつけるシンプルなバッタの戦士がより力強く思えて今でも大好きなライダー。
グリッドマンは主役陣が中学生で発生する事件も町内会規模な為、ガキにはとても親しみやすかった様に思える。
ちなみにこの時期肺炎で入院したことがあった。
親は宿泊できないので代わりに置いていったのがグリッドマンのソフビ。
まだ外泊文化のないクソガキにとって、この小さなハイパーエージェントは夢のヒーローとして心の支えとなった。
戦隊離れした平成6年
仮面ライダーJ。イトーヨーカドーでソフビの購入稟議を母に通した際、「前に買ったでしょこれ」と言われた。それはJじゃない、ZOだ。と訂正をし、なんとか購入に至ったのも良い思い出だ。体の装飾と手の形を比較対象にして熱っぽく語った覚えがある。お店に迷惑だからやめろよ俺。
永遠の誓い一人勝ちな平成7年〜9年
就学と共にライダー冬の時代を迎え、個人的にも特撮ヒーロー冬の時代が到来した。
ゲームやドラゴンボール、ホビーに可処分時間を取られていた様に思う。
ただし、夕飯時に放送していたガイファードだけはかかさず見ていた。
時代をゼロから始める準備をしていた平成10年
もう特撮の畑には戻らない様な気がしていた所、強烈に呼び戻されることになる。
なんとそこにいたのは1号、2号、V3、ライダーマン、エックス。
バンダイベンダー事業部の主幹事業となるHGシリーズの誕生である。
もう二度と会えないかもしれない、そんな焦りもあり、ここから止まった時計の針が再び動き出す。
ほぼ時を同じくしてバンプレストがコンビニキャッチャーやガチャ王といった、ゲームセンター向けのプライズ機を投入。
昔の作品をテーマにした景品の数々を取り扱う事になり、仮面ライダーやウルトラマン、キカイダーやメタルヒーローを景品として現代に蘇らせていた。
今になって思えば当時子供だった大人たちが可処分所得を趣味に使える年代に達したこと、ノスタルジーを売りにしたビジネスが本格的に造られ始めたこと、といったマーケティング背景が揃う過渡期にあった様におもえる。
昭和特撮ヒーローに飢えていた俺はメインターゲットじゃないにも関わらず、数少ない軍資金で仮面ライダーや東映特撮シリーズを買い集めては学習机に並べてニヤニヤしていた。
同級生とダイエーに行った日にはこっそりHGシリーズのライダーやウルトラマンに課金している鬱屈した小学生ライフを送っていたが、本屋でまた奇跡的な邂逅を果たす。
秋田書店の棚で浦安鉄筋家族の新刊を探していた所、たまたま見つけたのが「人造人間キカイダー」。
漫画あんの!?と言う、超基本的な情報すら持ち合わせていなかった小学生はガシャに回す課金分のリソースを漫画に振ることになった。
不幸なことに仮面ライダー以上に映像視聴の機会が少ないキカイダー。ジローの活躍は何故か家にあったVHS6巻のブラックホース、キンイロコウモリ、ダイダイカタツムリ戦だけが確認できたが、それ以降は2002年の東映BBという初期の動画ストリーミングサービスを待つほか無かった。
荒野を渡る風飄々と平成11年
仮面ライダー冬の時代はプライズというシーンから徐々に氷解していく兆しがあった様に思う。
そんな中、唐突に近所の電気屋のチラシに嵐と共にやってきたのはPS版仮面ライダー。
格ゲーのシステムを取り入れた純粋な仮面ライダーのゲームだ。本郷猛や一文字隼人がプレイアブルなだけではなく、怪人はもちろん戦闘員までも使える異常な凝り方だった。
周りの友達がチョコボやらモンスターファームやらをやる中で一人ずっと戦闘員に電光ライダーキックをブチ込みまくっていた。
このゲームがどれくらい売れたのかわからないが、ここら辺りからクウガに向けて着々とライダーを市場にぶつけてどれくらい戦えるか、を調査していたんではないかと思う。この頃まだクウガという存在はなかったにせよ。
20世紀最後の平成12年
特撮の飢えを満たすネタは再びゲームからやってきた。
いつも時間を潰す本屋で見かけた一枚のビラ。
A4用紙いっぱいに配置されているSD頭身の宇宙刑事ギャバン、怪傑ズバット、キカイダー、マン、セブン。
バンプレスト謹製のRPG、スーパーヒーロー作戦だ。
当時長崎屋にあった試遊台では体験版の「蒸着せよ!宇宙刑事ギャバン編」が遊べたので、部活が終わったらアホみたいに通って蒸着シーンを見ていた記憶がある。
発売日前日には眠れないほどワクワクしたが確か2回くらい発売が延期され、ショックでスパロボ完結編Fを買って行こうかとも思ったりしていた。何やってたんだか。
そんなこんなでついにクウガの一報を見ることとなる。
最初に見たのは弟が読んでいた「たのしい幼稚園」。
「なんだこのライダー、知らないやつだ」くらいの認識だったが徐々にこれが新作であるということ、年明けに始まるということが判明していく。
今となってはこの21世紀に切り替わるタイミングこそが「時代が望む時、仮面ライダーは蘇る」という石ノ森章太郎氏の言葉の通り時代が望んだタイミングだったんだな、と思う。
平成も終わり令和となった今、
動画ストリーミング配信スタイルも普及したことでかつての仮面ライダー、ウルトラマン、スーパー戦隊、ゴジラシリーズは昔の特撮ヒーローではなくなった様に思う。
いつでも自分が見たいコンテンツにアクセスし、活躍を見られる理想のUX。
90年代過渡期に血眼になって特撮情報を追っかけた小学生の自分に聞かせたら羨ましすぎて卒倒するんじゃないかと思う。
平成大特撮1989-2019は毎週毎週ライダーやウルトラの新作を享受できる今という時代はとても恵まれているということをなんだかぼんやり思わされる、そんなきっかけになった本だった。